桜町きつねの恩返し(3)

「分かったよ。安心しな。明日から、このわしがうどん玉を一つ、いや二つずつ運んできてやるよ」 うどん屋は、えらい約束をしてしまったとは思いながらも、子狐のかわいい眼や、白狐の必死さを思い出しては、うどん玉を二つ、時には油揚げまでも持っていってやったりしました。

その年の二百十日、例年にない大型の暴風雨が吹き荒れました。うどん屋の周辺は屋根瓦の大半が吹っ飛び、戸障子までもが飛ばされました。
けれども、一番お粗末なうどん屋だけは不思議なことに瓦一枚飛んでいませんでした。
それから、あの嵐の夜、うどん屋の屋根の上に白狐がいたというものさえ現れ、これは白狐の恩返しだったものだと言い合ったといいました。おしまい
出典:特集明石の民話 明石大門明石ぺンクラブ作品集より